大腿四頭筋と横安定の能力

膝痛の解き明かし

大腿四頭筋の位置と構造

大腿四頭筋は有名な筋肉です。太ももの前面の筋肉で、4つの筋肉からなっています。骨盤や大腿骨から膝のお皿(膝蓋骨)を経て下腿(脛骨)についている強力な膝の伸展筋です。

歩きの中では、遊脚相後半から立脚相中間かけて大きな筋活動を起こします。
また、蹴り出し前後に小さな筋活動を起こします。

大腿四頭筋は、体重の受け止めが主な役割

解剖や運動学の本には、「膝を伸ばす強い筋肉」と紹介されます。
「歩く」「階段の上り下り」「立ち座り」など日常動作に欠かせない筋肉です。
実際は、体重がかかったときに膝が前に流れて、足底に体重が乗らないことを防ぎ、しっかり体を支える働きをしている筋肉です。
また、階段を上る時のように、重力に対して対抗する筋肉でもあります。

次回で述べますが、体を支える活動「抗重力活動」は、多くの筋肉のチーム活動です。各筋肉にはそれぞれ役割があります。ひとつの筋肉を鍛えて動作がうまくいくことはありません。ひとりの強力なストライカーを育てても、そのサッカーチームは勝てないでしょう。
大腿四頭筋は大切なチームメンバーですが、彼はオールラウンダーではありません。

大腿四頭筋が、膝の左右安定に貢献するとは思えない

膝のトレーニングを計画するときに必ず「大腿四頭筋強化」が入ります。
私も以前、膝についている強大な大腿四頭筋を鍛えることで膝の安定に役立つと思っていました。

大腿四頭筋は、強力な抗重力筋で、矢状方向(体の前後方向)に力を発揮します。段差の大きい階段やジャンプやその着地などで大きな活躍をします。

変形性膝関節などの膝痛の原因である偏った関節面への体重負荷は、前額方向(体の左右方向)の問題から起こります。

実は膝関節は、「横の揺れ」にとても弱いです。

股関節は、内外転という可動域もその役割の筋肉も持っていますが、膝は可動域も筋肉も持っていません。
だからこそ、この「横ストレス」を股関節や足部でカバーすべきです。

大腿四頭筋は、矢状方向(体の前後方向)の安定をもたらしますが、膝障害の原因となっている「横方向」「回旋方向」の安定に役立っているとは思えません。

膝の左右安定に関わっているのは、下腿の左右の筋肉

膝そのものには、横方向に対抗する筋肉はありませんが、膝のベースである下腿にはあります。

腓骨筋は外側、後脛骨筋は内側にあって、荷重時、足部は固定なので、下腿両側の筋肉は、前額方向(体の左右方向)に作用すると考えて良いと思います。

この2つの筋肉は、解剖学では、地面についていない時の作用を示しています。
(後脛骨筋は底屈内反・腓骨筋は底屈外反)

実際は、この筋肉たちは地面についているときに働きます。
・足指グリップで足部が固定されているときの下腿の左右方向の安定。
・歩行の蹴り出し時の左右安定と蹴り出し補助。
・斜面を横切って歩くときなどの左右調節。

まとめ

・大腿四頭筋は、強力な抗重力筋のチームの一員である
・大腿四頭筋は、矢状方向(体の前後方向)の安定に寄与
・大腿四頭筋は、前額方向(体の左右方向)の安定にはあまり寄与しない
・下腿の左右の「腓骨筋」「後脛骨筋」は、下腿の左右安定に寄与している

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